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野守り山守り

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渡辺愛子 信楽掛花入 銘『十六夜』

御近所さんのトシユキちゃんは、御厚意でうちの庭の手入れや店の周りの草刈りをしてくださってます。他にも田んぼや畑を耕したり、いわゆる(野良作業)を楽しみながらされているおっちゃんです。そのトシユキちゃんが「ヒロキ~、山いったらよ~、“あけび”あったさけなぁ、採ってきちゃってんけど、使うけ~?」と届けてくださいました。「トシユキちゃん、いっつもすまんこっちゃわ!」とありがたく使わせていただきました。カウンターの後ろの柱に掛花入を掛けて活けてみました。

142_4223 (バカっと)口の開いた実を正面に向けて蔓や葉はそのままで。この季節、山へ草花を取りに入ってあけびを見つけますと、鳥との競争です。前の日に「まだ口開いたらへんなぁ・・・。」と思って翌日行くと、すでに鳥たちが「お先ぃです。。。」と啄んでしまっていることが多々あり、悔しい思いを何度したことでしょう。野趣あふれるあの(甘味)は、山の中でしか味わえない格別なものです。掛花入は渡辺愛子さんの作品。大茶人・松永耳庵旧蔵の備前花入『十五夜』を写したもので、私は十五夜の次ですので『十六夜』と銘をつけました。

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“野守り”のトシユキちゃんの次は、“山守り”のみよちゃんです。「ヒロキさ~ん、採ってきたで~。」と大きな袋いっぱいに“香茸”を採ってきてくださいました。みよちゃんはきのこ採りの名人。いっしょに山へ入ってもきのこを見つけるのが早い!はやい!!「ヒロキさん、ほれ、そこよ、そこやんか!!」と言われるのですが、「そんなん、わからへんわ~。」先陣切って歩く私ですが、みよちゃんには負けてしまいます。

142_4231 今日はあまりにたくさんでしたので、乾燥さすことにしました。天日干しをして保存し、使うときは水でもどします。干すことで(旨味)が凝縮するのは椎茸もいっしょ。晩秋から初冬にかけて鶏といっしょに炊き込みご飯にしたり、炊き合わせの一品にしたりします。

トシユキちゃんもみよちゃんも、うちの常連さんで魚仙のファン。皆さんに支えていただいてこその魚仙やねんなぁ・・・と、あらためて感謝の気持でいっぱいになりました。「おおきになぁ、トシユキちゃん、みよちゃん。」本当にありがとうございました!!

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海鼠(なまこ)釉の器

141_4189 卯山窯 海鼠釉鉢  神山直彦 ぐい呑み

小川顕三 線紋徳利 

142_4221 今月の点心より。『信楽まちなか芸術祭』のポスター、ご覧になられましたか?火鉢が並んだこの道、私が最も信楽らしい道と思う通りです。この道のある町の名前は“大窯町(おおがまちょう)”。その名の通り昔は火鉢を焼く大きな登り窯が彼方此方に点在していた地区で、今は使われなくなった登り窯がわずかながら佇んでいます。この道は車の対向もちょっと困難な道幅ですが、今も信楽住民の(抜け道)として交通量も多く、窯元も道沿いにたくさんあります。今日も窯元さんが軽トラで焼き上がった商品や生(なま=焼成前のもの)を積んでは、この坂道を上ったり下りたりされていることでしょう。私らの子供の頃はこの辺りも遊び場でして、窯屋のおっちゃんに怒られながら日が暮れるまで遊びまわっていた、信楽の“原風景”といった趣のあるところです。このポスターを見た時は、「ええ場所、使うてくれやったなぁ。」と嬉しい気持ちになりました。

141_4190 今月の『季節の点心』の油物の器は“大窯町”出身。それもこのポスターに写っている窯元さんの器なのです。右側の石垣と茶色い板塀の建物、『卯山(うざん)窯』さんの“海鼠釉”の鉢。“海鼠釉(なまこゆう)”はそれこそ登り窯が盛んに焚かれていた信楽全盛期に、主力商品だった火鉢の代表的な釉薬で、他にも植木鉢などにも用いられた信楽を象徴するものでした。しかし近年では需要も少なくなり「時代遅れ」の感もあったのですが、ここ最近はまたその魅力が見直され始め“海鼠釉”を使った作品・商品も見かけるようになりました。

141_4191 私も「海鼠釉を使った食器のいいのが出来ひんかなぁ・・・。」と前から思っていましたが、なかなか思うようなものが見つからずにいました。数年前にたまたま『卯山窯』さんへお邪魔した際にこの器の“生(なま)”を見て、「この器、なかなかええやん!この胴の部分のラインは轆轤では出せへんで!」と、ちょっと軽く・甘く見ていた窯製品を見直す機会があり、あらためて窯屋の底力・凄さを見た気がしました。そこでこの形から火鉢を連想し、『卯山窯』のテルユキちゃんに「これ、海鼠で出来へんの?」と尋ねますと「オバァに聞いてやってみたるわ。」とチャレンジしてくださることに。登り窯全盛時代を生きてきた『卯山窯』のおばあ様は、やはり生き証人。細かいことは経験者の言葉が一番信用できます。なかなか難しい仕事だったようですが、魅力ある器が出来上がってきました。

141_4190_2 ちょっと小振りの海老芋を剥いて炊き、細かく砕いた白焼あられをまぶして油で揚げます。餡には蟹の身をほぐして入れ天盛に生姜と白葱を添えました。『海鼠釉』といいますと、(下手なもの)という心外な評価を受けることもありますが、なかなかどうして、使い方によっては印象深いものができます。今月の点心は“トリエンナーレ仕様”ですので、器使いもポスターに因んで丁度いい“トリエンナーレ仕様”です。

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天平米(てんぴょうまい)の焼鯖すし

142_4207 川口隆之 信楽大皿

福田英明 粉引角皿

いよいよ今日から信楽陶芸トリエンナーレ2010『信楽まちなか芸術祭』が始まりました。信楽町のまちじゅうで、様々な企画とおもてなしで皆様方のお越しをお待ちいたしておりますので、どうぞお出掛けくださいませ。

142_4210 魚仙も“おもてなし店舗”としてトリエンナーレに参加させていただいています。先日からご紹介させていただいている『季節の点心』も“トリエンナーレ仕様”で早速お召し上がりいただいたお客様からも御好評いただいておりますが、その中でもとりわけ話題になっていますのが(八寸)に盛り込まれているこちら、『天平米(てんぴょうまい)の焼鯖すし』でございます。

142_4215 まず驚かれるのが寿司飯の色。まるで赤飯のようなこの色は、古代米の“黒米”を酢飯に混ぜることで発色し、お客様に強烈な印象を与えるようです。以前、信楽の『げなげな市』さんで毎月一回焼鯖すしを限定販売させていただいていたのですが、お客様からのご要望が非常に多かったのと、以前から「古代米を使ったなにかを・・・」という私の思いから出来上がったのがこちらの寿司なのです。古代米は昨今の健康食ブームで注目を集めていますが、本来は遠い昔から先人達が食べつないできたもので、赤飯も小豆を入れる以前は黒米や赤米で色を付けていたそうです。今も甲賀市内では何件もの農家が古代米を作られており、甲賀寺の天平文化より脈々と続く(そまびと)の息吹を感じます。寿司酢も魚仙特製のもの、焼鯖も野菜味噌もおなじみのものですが、御飯が古代米を入れてますので少し(モチっと)した感じと黒米の(プチっと)した食感が個性的かもしれませんね。名前も「古代米(あるいは黒米)の焼鯖すし」でもよかったのですが、せっかく信楽という歴史あるところで作らせていただくのですし、古代・天平の紫香楽への思いを馳せながら『天平米(てんぴょうまい)の焼鯖すし』と銘打ちました。

142_4212 大皿は川口隆之さんの穴窯の作品。灰釉がたっぷりと掛って豪快な作風です。川口さんは普段は粉引や釉薬ものの作品を手がけておられますが、何年か前に築窯された穴窯の調子がよろしく、「よう言うこときいてくれよるねんわ。」と窯焚きに夢中になられることもしばしばあるようで、私のすし組合の仲間で長浜の『京極寿司』のMくんも色々と作品を分けていただいているそうです。

142_4214 今日もたくさんのお客様に御所望いただきました。トリエンナーレの期間中は店頭でも販売させていただいておりますので、皆様一度ご賞味くださいませ。どうぞよろしくお願いいたします。

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