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うなぎめし

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山村秀和 灰釉丼鉢

“土用の丑”の日の前後になりますと、店の賄いでも鰻を食べます。焼場の職人さんが焼いてくれるので、店でお客様にお出しさせていただいてる鰻と同じようなものなので、ちょっと贅沢な賄いです。食べ方も人それぞれで、普通にどんぶりにして食べる人もいれば、蒲焼として食べる人も。中には持って帰ってお酒のアテにする人も。

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そんな中、私は細かく刻んで“ひつまぶし”風にしました。ご飯にタレをからめて、残っていた錦糸卵を散らしました。その上に刻んだ鰻をのせていただきます。名古屋で初めて食べた“ひつまぶし”が印象に残っていて、私はよく鰻を刻んで食べます。こうするとご飯と一緒に口の中へ鰻を運べて美味しく頂けると思うからです。最後はお吸い物をご飯にかけて“お茶漬け”で締めます。

141_4139_2 丼鉢は山村秀和さんの作品。山村さんもご飯ものが大好きで、その気持ちは作られる飯碗や丼鉢にもよく表れているように思います。手取りや口当たりの良さは、食器名人の山村さんならでは。おおらかな轆轤のさばきは、まるでご本人を見ているようで可笑しいもんです。

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鯉江良二作引出し黒茶碗 銘『ナイショ話』

141_4147_2 鯉江良二 引出し黒茶碗

      銘『ナイショ話』

それは最期まで、ないしょの話でした・・・。

十年以上前、当時信楽の陶舗・○小屋さんの中にあった現代陶のギャラリーⅠでひとつの茶碗を見つけました。現代陶を代表する常滑の作家・鯉江良二さんの引出し黒の茶碗。

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141_4144 鯉江さん得意の“引出し”の作品。轆轤の動きがそのまま残っているような躍動感のある茶碗で、形は半筒の沓型。高台の削りも尋常ではなく、土を(むしり取った)ような凄味のある削りで迫力があります。鯉江さんの茶碗にしては少し小ぶりです。もし、この茶碗がもう一回り大きかったら、それこそ“化け物”のようなとんでもなく強い茶碗になっていたのではないでしょうか。

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茶碗の裏面と飲み口側の写真ですが、ヘシャゲ具合も普通でないのがよくわかります。“引出し黒”となっていますが、こうしてみると“黒織部”といっても差し支えないと思います。桃山の世、もしもこの茶碗が利休や織部の目の前にあったら、大師らは一体どんな眼をするでしょうか。

・・・いろんな思いでこの茶碗を見たあと、早速“焼物狩り”の盟友・狸庵の藤原宏章に「○小屋のⅠに鯉江さんのええ茶碗があるぞ!!」と連絡を入れ、狸庵も速攻で見に行ったらしく「めちゃくちゃええ茶碗やんけ!!魚仙、お前あの茶碗買えさ!!」と勧めてくれました。しかしながら、当時の私にはこの茶碗を買える財力がなく「俺、ちょっとイケへんし、狸庵イッといてくれ・・・。」と言ったのですが、狸庵も「お前が先に見つけて権利あるねんし、お前めっちゃ欲しがってるのに俺、横取りでけへんわ。それに俺もちょっと金欠や・・・。」と互いに決め手に欠けてしまいました。ギャラリーのオーナーは私達と同級生のA子ちゃんで「もう分割にしたげるし、魚仙イッときいな。」と言われたのですが結局答えは出ず終い。そうこうしているうちにある日、狸庵から「魚仙、あの茶碗、売れてしもたぞ!!」と連絡が入りました。二人してギャラリーⅠへ行きA子ちゃんに聞きますと、なんでも大阪のコレクターが買っていったとのこと。「あ~あ、ええ茶碗やったのになぁ・・・。」と私がため息交じりに言いますと、A子ちゃんと狸庵が二人して「魚仙が思い切って買わへんかったし、よそへ 行ってしもたんやんか。魚仙は“ヘタレ(根性無し・甲斐性無し・意気地無しの意)”や!!」とまで言われてしまいました。買えなかった自分自身に腹が立って「絶対、あの茶碗よりええ茶碗買うてやる!!」と心の中で叫んでいる“ヘタレ”な私が、そこにはいました・・・。

・・・忘れもしません。2000年7月28日、次の日から『陶器祭り』が始まるというその日の夜中、突然狸庵は天国へと旅立って行ってしまいました・・・。驚き・悲しさ・寂しさ・怒り・切なさ・・・様々な思いが私の中を巡り、祭りの忙しさと葬式の忙しさとが一度に心と体に圧し掛かってくるという、今まで経験したことのないパニックのような精神状態のなかで数日間を過ごしたことが思い出されます。葬儀の段取りを家族の方や友人たちと狸庵の事務所でしていました。家族の方も突然のことなので、どこに何があるかもわからず私達もそこらじゅうを開け閉めしながら準備をしていたときのこと。私がひとつの戸棚を開けますと、黒い茶碗が出てきました。「ん・・・?この茶碗!!」そうです。鯉江良二作の引出し黒のあの茶碗でした。「なんで、ここにあるねん!!」

葬儀はたくさんの友人・知人、ご近所さんや従業員さんのお力で何とか終えることができました。終わった後、友人たちが寄って話をしているときにあの茶碗の話になりました。するとみんなに、悲しさの中にも笑いが起きてきます。そしてA子ちゃんが「ほんまに魚仙だけが知らんかってんな・・・。」と泣き笑いで話しだしてくれました・・・。あの時迷って買えずにいる私を出し抜いて驚かせてやろうと、ジョークの好きな狸庵は何とか資金を集めてあの茶碗を手に入れました。そしてA子ちゃんには「絶対魚仙には内緒にしておいて、あいつが違う鯉江さんの茶碗を買ったら、ジャーン!!って感じでみせたろ!!」と口を合わせてたというのです。そして、信楽・狸庵を訪れた友人・知人にはあの茶碗でお茶を振舞っていたといい、そして最後には必ず「魚仙にだけは、絶対いうなよ!!」という言葉を全員に添えていたそうです。丹波のいっちゃん、よしきさん。京都の瓜生さん、重松さん夫妻、西村さん。別嬪さんの武藤さん・・・。みんなみんな知ってました。あいつのことですから近所の土建屋のおっちゃんにもお茶を振舞っていたことでしょう。知らんのはホンマに私だけでした・・・。

141_4141_2 この話を聞かれたご遺族の方のお申し出で、この茶碗は私が形見分けをしていただくことになりました。形見分けと言いましても、私は、私があの世へ逝くまで預かっているものだと思っています。やっぱりこの茶碗は狸庵のもんです。先日、ご縁があって、作者の鯉江良二さんに箱書きをしていただくことができました。銘は『ナイショ話』。

141_4149 この銘は私から狸庵への十年目の贈り物です。

・・・今でもふと、あいつの嬉しそうに話しをしている声が聞こえてきそうな時があります・・・「魚仙にだけは、絶対にいうなよ!!」

僕だけには最期まで、ナイショの話でした・・・。

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おでん

141_4128 篠原希 灰釉鉢

      信楽粉引片口 ぐい呑み

私が大阪へ出掛ける一番の楽しみは“おでん”を食べに行くことです。その“おでん”屋さんの店が開く時間までをギャラリーや骨董屋巡りをして、時間を潰しているといっても決して過言ではないのです。それぐらいそこの“おでん”は私の舌を惹きつけてやみません。

その店の名は『た○梅』さん。大阪では老舗の皆さんご存じの名店です。私がいつも伺うのは(新梅田食道街)の中にある“北店”。そこでおでんや名物の“たこの甘露煮”などをアテに夏場でも熱燗で「きゅ~ッと」やるのが至福のひとときなのです。“おでん”と申しましても、『た○梅』さんのそれは、仕込みにも十分に手間をかけたもので、今では貴重なクジラのサエズリやコロなども種にあって、季節の野菜や魚介も多々あります。いわゆるそこらへんの“おでん”とは違うのです。

141_4130 先日もお邪魔した際に、(新じゃが)と(やりいか)が種に上がってましたので早速いただきました。新じゃがはホクホクで美味しかったですし、やりいかは注文してからさっと炊いてくれ、子持ちで旨味がありました。季節ものでしたので「これはアレンジしたら、うちの店でも使えるかも・・・。」と考えつつおかわりをお願いしました。早速帰ってから試作します。『た○梅』さんのおでんの出汁はいろんな材料からの旨味で出来ているものなので同じようにはいきません。うちの出汁を活かした炊き方でコースの一品としてご提供できるように仕立てました。

141_4129 青味には青梗菜を添えました。器は篠原希さんの灰釉の鉢です。見込みもありますので煮物を盛るのによく使う器です。篠原さんとも『た○梅』さんにはご一緒したことがあります。大阪出身の篠原さんですが『た○梅』さんはご存じなかったみたいですが、喜んでいただけたみたいでした。それよりも私の食べっぷりと“呑みっぷり”にたいそう驚かれたようでしたが・・・。

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酒器も篠原さんの作品です。呑ん兵衛の私には嬉しい大ぶりのぐい呑みです。隣の写真の折り紙はうちの箸袋でお客様が折られたもの。そのお客様とはなんと『た○梅』さんの総料理長!!先日はるばるご来店いただきました。緊張しましたが総料理長のいつもの“しゃべくり”でこちらの方が楽しませていただきました。これではいつもとおんなじですやん・・・。

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祇園祭

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長谷川奈津 鉄釉茶碗

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昨日は『祇園祭』のお寿司をお届けに昼過ぎから京都まで配達に行きました。うちの母の大学の時の同級生の方々で、毎年『祇園祭』の“祭り寿司”をご注文くださいます。今年は“鯖すし”が14本、“鱧すし”が4本のご注文でした。京都にもたくさんお店があるというのに本当にありがたいことです。朝から仕込みにかかります。

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鱧は先日の鱧すし同様に“骨切り”をして串をさし、照り焼きにします。“鱧すし”に使うのは身幅のしっかりした部分で、写真に写っている尻尾の部分は、身を押し潰して“鱧の箱寿司”に使います。

140_4084 鱧すしを巻くときはさらし(布巾)ではなく、ラップフィルムで巻きます。これは鱧の照り焼きにした“熱”を利用して、焼身にした鱧とすし飯をしっかりと馴染ませるための工夫です。“熱”でラップが伸び縮みして程よく包み込みます。

さすがに京都は車も人もいっぱいで、予定の時間をはるかにオーバーして到着しました。お客様には、大変お待たせして申し訳なかったのですが、「お兄ちゃん、混むのはわかってたし、大丈夫やで。たいへんやったやろ?毎年ありがとうなぁ。」と喜んでいただいて、おまけにお土産までいただいてしまいました。本当にありがとうございました。お届け先が(四条通高辻)という、『祇園祭』“ド真ん中”の場所でしたので、帰りもたいへん。抜け道・抜け道で無事帰ることができました。

141_4115 帰ってきてちょっと一服。先日お客様にいただいていたお菓子と抹茶をいただきました。お菓子は大津・膳所の『亀屋廣房』の“若あゆ”と“近江八景”。この時期の涼しげなお菓子です。

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141_4121 茶碗は長谷川奈津さんの鉄釉のもの。8年ほど前に東京の瑞玉ギャラリーで購入した作品です。長谷川さんは早逝した故・青木亮さんの愛弟子だった方で、師匠譲りの“蹴轆轤”の技術と柔らかさが魅力の作家さんで、特に鉢ものや碗、片口といったやはり“蹴轆轤”を活かした作品がお得意。釉薬も(粉引)や(刷毛目)・(灰釉)・(鉄釉)・(飴釉)といった、渋い玄人好きのするようなものが多いのですが、“使えば活きる”器を多く作られているので、ご婦人方にも人気があります。関東の方では売れっ子でなかなか関西方面では展覧会をしていただけないようですが、私としては是非やっていただきたい作家さんの一人です。この茶碗も鉄釉で、地味な一見するとなんでもないようなものに見えますが、茶映えもよく、轆轤目を生かした施釉で、全ての色を含んだような深い黒の鉄釉のように思います。

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名残の鉄線

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澤清嗣 信楽蹲(うずくまる)掛花入

鉢植えでいただいて店の裏に放置してあった鉄線に二輪、名残の花が咲きました。去年もいただいた鉄線の鉢を「地植えしたらなあかんなぁ・・・。」と思いながら、結局は長い間ほったらかしにしてしまい、姉貴分のユキちゃんが持って帰って復活させたことがありました。「ヒロキ~、アンタ今度鉄線もろたら、絶対地植えしたりや!!」とキツーぅ言われてますので、今年は植え替えてやろうと思います。

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141_4110 鉄線一輪と添えの葉で入れました。花入は澤清嗣さんの蹲の掛花入。焼成中に窯から引き出した作品で、急冷によって発色した鮮やかなビードロの緑が涼しげです。この蹲は、うちの母が気に入って澤さんが個展に出品する予定だったものを、半ば強引にわけていただいたもの。「清嗣ちゃん、他のモン出しといたらええやん!!私が気に入った言うてるねんし。」そうです。澤さんと私の母とは同級生なんです。小振りで可愛らしい小壺に鉄線がよう映えます。軸は山水。香炉も銀で夏を涼しく演出します。

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青汁オーレ

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藤田長夫 刷毛目茶碗

ここ数日前から、知人の勧めもあって“青汁”を飲み始めました。「40も手前やし、そろそろ体のことも考えんとなぁ・・・。」と思っていましたので、この機会に始めてみました。しかし、青汁といいますと以前コマーシャルでありました、あの「まず~い!!もう一杯!!」のイメージしかなく、ちょっと引きぎみだったのですが、「絶対まずくない!!」という知人の言葉を信じていただくことに・・・。

140_4097 説明書きを読みますと、水または牛乳で溶かして・・・とあります。ビギナーの私はちょっとでも苦くないようにと思って迷わず牛乳で。恐る恐る口をつけますと「・・・ん!?・・・何にも苦くない!?・・・こんなん抹茶オーレやん!!」思っていたのとは全然違って牛乳で割ると逆に美味しいぐらいでした。次の日からは青汁の粉をお湯で少し点ててから牛乳を足して“青汁オーレ”に仕立てていただいてます。

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抹茶オーレならぬ“青汁オーレ”に仕立てますので、器も茶碗でいただきます。夏らしい刷毛目の茶碗は藤田長夫さんの作。刷毛目の勢いもさることながら、轆轤目や高台の削りにもすばらしいものがあります。

140_4099 見込みも(スーッと)深く、いい茶碗の条件を備えています。こんな茶碗で○○オーレなんぞいただくな!!と、お叱りを受けそうですが、評論家の小林秀雄はとんでもない三島の平茶碗で牛乳や紅茶を飲んでいたそうではないですか。私なんかはカワイイもんです。アラフォーのみなさん、“青汁オーレ”お勧めします。

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鱧すし

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古谷信男 粉引たわみ大鉢

『鱧は梅雨の水を吸って脂がのる』といわれます。春先から鱧を御所望されるお客様も多く、“鱧おとし”や“鱧の天婦羅”でお出しさせていただいてましたが、“鱧照り”といわれる鱧の照り焼きだけはお出ししてませんでした。“走り”の鱧を焼きますとどうしても脂分が落ちてしまい、カスカスになってしまいます。そこそこの大きさと脂がのっていないと美味しくないのです。この時期になってようやく焼ける鱧が市場に並びだしました。魚仙の夏の名物“鱧すし”や“鱧の箱すし”をお待ちいただいていたお客様にもこれでお出しできます。

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鱧料理で大事なのは“骨切り”。鱧は小骨が多いので骨切りをしないと食べられません。一寸(約3㎝)に18~21くらい包丁目を入れますと骨が口にあたりません。名人は『一寸を二十四に切る』といわれます。骨切りの時に使うのが写真の奥に映っている“骨切り包丁”。私のそれは、普通の骨切り包丁よりも少しサイズが小さく、たん熊北店でお世話になった上司・茶山さんと同じサイズのもの。茶山さんは「活鱧を骨切りするのにはこのくらいの大きさの方が早く動かせていいんだ。」とおっしゃっていたのを思い出します。実際、茶山さんの骨切りは的確でほんま早かったなぁ・・・。

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焼き上げて少し冷ましてから、鱧すしに仕立てます。すし飯の間に山椒の実を炊いたものをしのばせます。器は古谷信男さんの粉引のたわみ鉢。信楽で“粉引”と言えば信男さんのことと言っても過言ではないくらい白い器のお得意な作家さんです。この大鉢は少し粗い土を使って成形されているもので、白化粧の下から見える石ハゼが強い印象をあたえてくれます。そして信男さんの最大の“得意技”である“たわみ”。この縁の微妙でやわらかい、且つ巧妙な“たわみ”はわざとらしくもなく、かといって自然に歪んだわけでもない計算されたもので、轆轤成形でもタタラ成形でも自在にみせることのできる信男さんオリジナルの技術だとおもいます。久しぶりに私自身がこの鉢に盛り付けをしたのですが、やはりやわらかく料理を受け入れてくれました。

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銘『裂ケマクル』

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澤清嗣 信楽蹲(うずくまる)

 銘『裂ケマクル』

六月の終りに、お茶人さんの御席がございました。軸は六月の嵐山を詠んだ歌と、冷泉家の七夕の催しを描いた画を表装したもので、六月の中頃から七夕まで掛けられます。山へ入って使えそうな草木を探しに行きますと面白い枝ぶりに青々とした葉っぱのついた山帰来をみつけました。これを真にしてお客様にいただいた“ほたるぶくろ”を挿すことにしました。

140_4074 山帰来の枝を生かして葉っぱを巻きつかせるように添えました。残った枝とほたるぶくろをあしらって。花を入れるときは、決まる時はパッと決まってすぐに入れられるのですが、ダメなときは何度やってもピタッと決まりません。この日は2分ほどで出来てしまいました。枝ぶりのいい花木に出会えるとそういうものです。料理にも同じことがいえるのではないでしょうか?

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花入は澤清嗣さんの蹲(うずくまる)。焼成中に窯から“引き出し”た作品で、急冷により生じた鮮やかなビードロが清涼感を醸しだし、梅雨時期に涼を添えてくれます。澤さん独特の“割れ”や“欠け”をも“景色”とした作品で、ある陶芸雑誌が企画した座談会でこの蹲を手にして見た陶芸家の鈴木五郎さんが「澤さん、これは“うずくまる”じゃなくて、“裂けまくる”だなぁ。」と言われたそうで、この蹲が大好きだったⅠ編集長が「ハヤシダさん、こいつの銘は、『裂ケマクル』に決まったからね!!」と嬉しそうにおっしゃっていたのを思い出します。

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人参葉

140_4055 赤絵鳳凰文角向付

古谷和也 伊賀片口 信楽盃

人参葉が届きました。人参の間引き菜です。ちょっと苦くて(大人の味)という感じです。定番の胡麻和えにしました。人参葉は軸に固いところがありますので、外してやわらかい葉先の部分だけを使い茹でます。人参になる根の部分は湯がいて火を通しておきます。葉も根の部分も刻んで出汁に浸しておきます。アタリ鉢(すり鉢)で煎った胡麻を擂って砂糖と醤油を加えて味をつけます。出汁を切った人参葉を和えます。

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先付けにお出しさせていただきます。やはり少し苦味がありますので、いつものお浸しや胡麻和えよりは少し量を加減して盛りつけます。若いスタッフには盛りつけする時は“中高に”盛りつけることを心がけるように言います。(べちゃあ~)となるより(きゅっと)している方がかっこいいでしょう?

140_4053 この器はずっと前から店にあるもので、小付によく使います。手書きで書かれた鳳凰が華やかな印象をあたえてくれます。信楽の土ものの器の中にこういう華やかな器が入りますと、お互いが引き立てあいます。取り合わせの妙ですね。合わせた酒器は古谷和也さんの伊賀と信楽。どうです?いい感じでしょ?

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