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信楽火襷

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高橋光三 信楽火襷長皿

今月の『季節の点心』より。今月の点心の向付はガラスの器を使います。夏に向かって鬱陶しい時期ですので、ガラスは涼しげに映っていいのですが、よそからのお客様はやはり信楽の器を期待されます。今回は(口取り)に信楽の器を使うことにしました。

140_4064 高橋光三さんの『信楽火襷長皿』です。光三さんは高橋楽斎窯の次期当主で、五代・楽斎を襲名される方。と申しましても、ご本人は構えることなく、いたって自然体で作品を制作されています。作品には作者の人柄まで出るといわれますが、光三さんの器もしかり。温厚でてらいのない光三さんそのままに、丁寧に仕上げられた使いやすい器は料理を引き立ててくれます。光三さんはお若い時に茶懐石の老舗『柿傳』で学ばれたこともあって、焼締の食器を作られても実にお上手。私は普段、こういう焼締の器には口取りのような繊細な盛り込みは盛りません。力強い信楽焼締の器には繊細な料理が逆に貧粗に見えてしまうからです。しかし、光三さんの器は繊細な料理をも受け入れてしまう懐の深さも備えた焼締の器です。

140_4066 この長皿は“火襷”の文様があります。ご存じのように“火襷”とは、備前焼の手法の一つで、器をかさねて焼くときに器物どうしがひっつかないようにするため藁を挟んで焼成したのですが、その時に酸化焼成すると藁のアルカリ分と土の中の鉄分とが反応して緋色の筋が現れ思わぬ“景色”になったものをいいます。備前焼の手法なのですが、光三さんは備前の亜流ではなく、あくまで“信楽らしい”ものにこだわられます。穏やかな中にも一本筋の通った信楽。老舗の窯の(王道)を行く光三さんらしい器です。

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“いさざ”の生姜煮

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ダレン ダモンテ  粉引割山椒

“いさざ”って魚、ご存じですか?ハゼ科の魚で、ゴリにもよく似ていますがゴリよりも大きく、琵琶湖の固有種なんです。20m以深の湖底にいて、小鮎漁のときに一緒に獲れるのですが、年々漁獲量が減っていて希少な魚になってきています。早春には大豆と炊く“いさざ豆”が郷土料理であります。先日市場で“いさざ”を見つけましたので、生姜煮にしました。

140_4045 酒を鍋に入れて煮切ってから水をたします。水洗いした“いさざ”と輪切りにした生姜をたっぷりと入れて煮ていきます。途中で砂糖と濃口醤油とたまり醤油を加えて煮詰めていきます。時々、照りが出るように煮汁を掛けまわしてやります。

140_4059_2 小付にお出しさせていただきます。器はダレン ダモンテさんの粉引の割山椒。本来ならば割山椒は秋冬に使う器なのですが、ダモさんのこの割山椒は(御本)の発色も明るく、姿形も可愛らしく軽快なことから季節を問わず使わせてもらっています。

140_4062 小ぶりで可愛らしい印象の器ですが、縁の切り込みの鋭さなどには作者の主張が垣間見え、「どや!?魚仙?」というダモさんの声が聞こえてきそうな気がします。

滋賀県や京都市内で“いさざ”といえば、この“いさざ”なのですが、京都も日本海側の丹後や福井県になりますと、“いさざ”とは“シロウオ(素魚)”のことを言うそうです。所変われば・・・ではありますが面白いものです。

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どくだみと葉蘭

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杉本貞光 信楽蹲(うずくまる)

先日の休みの日に京都の建仁寺・両足院へ“半夏生(はんげしょう)”の花を見に行ってきました。“半夏生”はドクダミ科の多年草で、名前は夏至から11日目の(半夏生)に花を咲かせるからとも、葉の表面だけが白くなるからともいわれています。ちょうど、21日の月曜日あたりが見ごろだということでしたので、休日を幸いに出かけることにしました。

140_4049 あいにく、カメラを持っていかなかったので本物の“半夏生”の写真はないのですが、本当に綺麗で、庭園の緑と花の白が目に鮮やかに映りました。あと、気になったのが“葉蘭(バラン)”の葉。庭園の散策路にたくさん生えていて色もきれいな緑色で、「うちの庭の“葉蘭”もこんなに綺麗な緑色やったらええのに・・・。」と思いました。

140_4048 うちの店は寿司もさせていただいておりますので、盛り込みをするときに“葉蘭”を切って使います。庭にも“葉蘭”が植えてあるのですが、日当たりが強すぎて色が焼けてしまってますので、使える分が少なく大抵は花屋さんで買った物を使ってます。建仁寺・両足院で“葉蘭”を見たとき、「何枚か貰ろて帰ったろかいな・・・」と罰当たりな考えがふと頭の中を過りました。(もちろんそんなことはしませんが)それぐらい綺麗で立派な“葉蘭”でした。

140_4047 “半夏生”も、うちにはないので“どくだみ”を入れました。前は“どくだみ”という名前だけでも敬遠していたのですが、辻村史朗さんの油絵の作品の中に“どくだみ”をモチーフにしたものがたくさんあり、その(素朴さ)と(可愛らしさ)に気づいてからは好んで入れるようになりました。ただ、臭いだけは今でも気になりますねぇ・・・。“半夏生”も臭うのでしょうか・・・?花入は建仁寺塔頭ともご縁の深い杉本貞光さんの信楽の蹲です。

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破竹の炊いたん

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辻村塊 絵唐津片口鉢

この時期になりますと、店に破竹がたくさん届きます。コースの中ではほっと一息ついていただくような箸休め的な形でお出しさせていただいたり、若竹鍋にして鯛などの白身の魚と合わせてお出しすることもあります。

140_4041 ですが、私は個人の好みを申しますと普通に“炊いたん”が好きです。お出汁に酒と醤油とみりんを加え、追い鰹をして旨味をきかせます。じっくりと煮含ませていきます。煮物は味付けが決まったら一旦冷ましてからのほうが味が馴染んで美味しくいただけます。

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器は辻村塊さんの絵唐津。皮鯨の片口鉢で真ん円に挽かれた形と手取りの良さにひかれて購入したもの。渋い器肌に料理がよく映え、お茶事の出張料理の時にもよく使う器のひとつです。塊さんが独立されてから間なしに作られた器なのだそうですが、高台の土見せも渋く、そんな若い方が作られたようには到底思えません。そうそう、この口もお酒を呑んだときに試してみてわかったのですが、しっかりと注げて水切れもよく、決して飾りだけの口ではありませんでした。えっ!?この鉢で呑まれたのかって??ええ、まぁ・・・休みのときですが・・・。

140_4042_2 見込みには魚が二匹、気持ち良さそうに泳いでいます。メダカにしては大きいですし鮎でしょうか?いや“唐津”ですので、ボラかな?

破竹といえば、亡くなった私の親友でたぬきや総本家の四代目、狸庵・藤原宏章が大好きだった料理のひとつで、「魚仙、破竹出たら炊いてくれな。」といつも申していたのを思い出します。『焼物狩り』の“盟友”が亡くなってこの夏で十年目です・・・。

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鮎御飯

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土楽窯 灰釉土鍋

140_4036 昨日はゆっくりしていたのですが、こういう日は何かしたくなります。先に使わなければいけない鮎がありましたので、副料理長の石川さんに焼いてもらって、私は“鮎御飯”の用意に取り掛かりました。秋には鮎と松茸で“鮎松御飯”をお出しさせていただくこともあるのですが、さすがに松茸は早いので干し椎茸をもどして使いました。干し椎茸は旨味が強く出汁も出ますので、戻し汁も出汁に使います。焼いた鮎は中骨を抜いて姿のまま鍋に入れます。

140_4038 土鍋は土楽窯の灰釉のもので、十年以上前に常連さんのMさんからいただいたもの。Mさんは土楽窯の当主・福森雅武さんとは同級生で今もお付き合いのある方です。火にかけて沸騰して湯気が上がってきたら弱火にして約13分。15分ほど蒸らせば出来上がりです。

140_4039 頭をはずして混ぜます。この日は予約も少なく「三合ぐらいで十分かなぁ・・・」と思っていたのですが、当日予約と飛び込みのお客様でカウンターがいっぱいになりまして、もっと炊いておいてもよかったと思いました。お召し上がりいただいたお客様、いかがでございましたでしょうか?

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間引き菜

140_4020 小山乃文彦 粉引飯碗  鶴見宗次 灰釉皿

辻本由美子 青白磁杯

140_4008 この時期、よく“間引き菜”を届けていただきます。文字通り、蕪や大根の苗を生長に従って間引いたもので、やわらかくしっかり風味もありますので、そのままサラダ仕立にしたり漬物にしたりします。先日も常連さんのまあちゃん(社長さんです)が、「ヒロキ、ワレ、間引き菜持って来たったさけ、つけもんにでもせいさ~!!」と蕪の“間引き菜”を届けてくださいました。

140_4009 なんでも、まあちゃんの作る野菜は縁あって、京都の料理屋さんでも使われているそうで、そのお店は『ミシュラン・ガイド』でも星をもらわれたそうです。「ヒロキ、ワレ、ワシの作る野菜は“ミシュラン”級やど!!」とまあちゃんも誇らしげに言わはります。確かにいつも届けてくださる野菜たちは、それぞれしっかりと自分たちの味を主張していて、私らはその味を出すのにちょっと手助けをするくらいの調理でいいのです。

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“間引き菜”は、まあちゃんの言うとおりに漬物にしました。刻んで味付けは塩と唐辛子と昆布だけです。半日寝かすと十分に味わえます。豆ごはんといかなごの釘煮を添えてお出しさせていただきます。“間引き菜”の漬物の器は、鶴見宗次さんの灰釉。豆ごはんは小山乃文彦さんの粉引。いかなごは辻本由美子さんの青白磁。三人さんとも常滑で活躍される作家さんです(辻本さんは郷里の和歌山へ移られました)。何年か前にうちの店で三人さんの器を使ってお食事会を催させていただいたことがありました。『器楽食楽~知多半島から吹く風~』というテーマだったと思いますが、この時期になりますと常滑の潮風を思いだし、懐かしく感じます。皆さん元気でいらっしゃるのでしょうか?だいぶんとご無沙汰いたしてますので、今年は一度お伺いさせていただこうと思います。

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都わすれ

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平野敏三 信楽印花文筒花入

うちの母の妹分であり、私の姉貴分でもあるユキちゃんから“都わすれ”をいただきました。「ヒロキ~、これやったらアンタ、お茶の花に使えるやろ~」。ユキちゃんは花を育てるのが上手で、うちに半ばほってあった鉄線も持ち帰って見事に復活させました。うちの自宅の玄関を飾る鉢植えもすべてユキちゃんの育てたもの。「ヒロキ~、使えるもんあったらな~、いつでも採りにきいや~」お言葉に甘えさせていただきます。

140_4028_2 茶人の方のお席でしたので、お客様のお好みに合うようにと設えさせていただきました。“都わすれ”と山紫陽花の新花、ざくろの新芽を入れました。“都わすれ”の名前の通り、少し儚い、きゃしゃでつつましやかな姿で本来ならば他の花に添えるような形のほうがよいのかもしれませんが、花入にも合わせて、真に据えました。

140_4029 花入は私の敬愛する陶芸家、故・平野敏三さんの筒花入。焼締めの筒型の作品ですが、胴に印花文が押されています。一見すると幼稚で稚拙な感じのする作品ですが、天平の土管の残欠にも似ていて素朴な花を受け入れてくれます。入れ終わった後、「やっぱりちょっと寂しいかなぁ・・・」と思いましたので、軸にあざみの画を掛けて“花”を足してやりました。

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午前4時の鯖すし

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藤田長夫 小井戸茶碗 銘『歌姫』

140_4011 いつも仕入れに行く市場の八百屋さんの社長・H田さんは、うちの鯖すしの大ファンです。いつ行っても「大将、ええ鯖あらへんの?」と、野菜の話より先に鯖のことを聞いてこられます。いい鯖が入った時はご連絡させていただき、昼前の便で野菜を届けてくれる配達の方にことづけるのですが、この日は前日に鯖が確保できましたので市場へ仕入れに行くときに配達させていただくことにしました。

140_4012_3 市場へは午前5時に出発します。ですので、ご飯だけは前日の最終で午後10時に仕上げておき、朝から鯖すしを作ります。「遅れたらあかん・・・。」どうしても気になって、午前3時には目が覚めてしまいました。早めに取り掛かります。

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外がぼんやりと明るくなってくるのを感じながら、ご注文いただいた6本を仕上げて、竹の皮で包みます。包み方にもコツがあって、角々が“ピッ”と立つようにくるむのがポイント。そうするとカッコよくみえます。

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出来上がった時には時計の針が午前4時過ぎを指してました。時間に余裕ができたので、目覚ましの一服。(虎屋のういろう)をいただいてましたので、抹茶をいただきます。朝の抹茶はちょっと濃い目が好きです。

140_4035 茶碗は藤田長夫さんの小井戸。可愛らしい『歌姫』の銘がつけられています。姿・形は私の大好きな小井戸茶碗『六地蔵』のような感じで、たぶん藤田さんも作りながら頭のどこかに『六地蔵』があったのではないでしょうか?高台のカイラギもいい感じに出ています。さあ、鯖すしをもって市場へ出発です!!

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新巻鮭

140_4018_2 村田森 染付蛇の目文鉢

辻本由美子 青白磁皿

市場で新物の新巻鮭がありましたので仕入れてきました。鮭は捨てるところがなく、叩けば骨まで食べられます。卵はイクラ、腎臓はメフン、頭の軟骨は氷頭(ひず)と言って珍味で食され、北海道のアイヌの人々の間では古くから“神がくれた魚”といわれていました。

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秋に大量に獲れた鮭を長期保存するために内臓を取り塩を詰めることによってできた新巻鮭ですので、やはりきつめの塩分をどう処理するかがポイントです。三枚におろしてから(家庭では使う大きさに切ってから)、たっぷりの水に少量の塩を混ぜて(呼び塩といいます)鮭の切り身を漬けます。鮭の大きさや塩のきつさにもよりますが、2~4時間ぐらい漬けておきますと塩が抜けます。今回は押し寿司にしようと思ってましたので、水気を切ってから酢に漬けました。しかし下ろした時の身の色の鮮やかさ!!どうです?ほんま、美しいですやろ!?

140_4019 京都からわざわざ私の寿司を召し上がりに来て下さるお客様がいらっしゃいます。今日はお座敷でしたので、握り寿司のあいだに鮭の押し寿司と笹巻寿司を鉢に盛り合わせて取り回していただきました。鉢は京都の村田森さんの染付。薪窯での焼成で呉須の発色もくすんだ感じで味があり、縁には窯変が見られます。蛇の目の文様も面白く春夏に活躍する、清涼感あふれる器です。

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