冬薔薇(ふゆそうび)
辻村唯 自然釉花入
玄関の迎付の設えから。私の祖父の林田泰友は趣味人で、俳句や陶芸を嗜んでおりました。体が不自由でしたので、陶芸の方は手すさびどころか(手なぐさみ)の範疇を超えるようなものではなかったのですが、俳句の方では林田二咲子(はやしだにしょうし)の名で、『信楽寒雷俳句会』という会まで立ち上げて、小紙や句集まで発刊するほどでした。俳句会でも重鎮でした故・加藤楸邨先生とも懇意にさせていただいていて、私が中学生のころ楸邨先生のご自宅までお供させていただいたことを思い出します。楸邨記念館にある楸邨先生の俳句を彫って作られた陶板は、祖父のところで制作されたものです。
今玄関の御足元入れの上に置いてあるのは、二咲子作の陶板です。俳人らしく自作の句を彫ってあります。
冬薔薇(ふゆそうび) 手をみるくせの つきにけ里(り)
冬薔薇とは、文字通り冬に咲く薔薇のことで、温室で立派に咲いた花ではなく、冬枯れの中にポツリと咲きだした花を指します。手すさびの焼物を楽しんでいた己の手に、冬枯れの花をみたのではないかと思います。
玄関の花は木蓮の新芽の枝と椿です。花入は奈良の辻村唯さんの作品です。自然釉の耳付きのもので、野の花がよく似合います。唯さんは2月4日から2月10日まで東京の日本橋三越本店で展覧会を開催されます。是非ご高覧下さいませ。
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