冬薔薇(ふゆそうび)

001林田二咲子 陶板

辻村唯 自然釉花入

玄関の迎付の設えから。私の祖父の林田泰友は趣味人で、俳句や陶芸を嗜んでおりました。体が不自由でしたので、陶芸の方は手すさびどころか(手なぐさみ)の範疇を超えるようなものではなかったのですが、俳句の方では林田二咲子(はやしだにしょうし)の名で、『信楽寒雷俳句会』という会まで立ち上げて、小紙や句集まで発刊するほどでした。俳句会でも重鎮でした故・加藤楸邨先生とも懇意にさせていただいていて、私が中学生のころ楸邨先生のご自宅までお供させていただいたことを思い出します。楸邨記念館にある楸邨先生の俳句を彫って作られた陶板は、祖父のところで制作されたものです。

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今玄関の御足元入れの上に置いてあるのは、二咲子作の陶板です。俳人らしく自作の句を彫ってあります。

冬薔薇(ふゆそうび) 手をみるくせの つきにけ里(り)

冬薔薇とは、文字通り冬に咲く薔薇のことで、温室で立派に咲いた花ではなく、冬枯れの中にポツリと咲きだした花を指します。手すさびの焼物を楽しんでいた己の手に、冬枯れの花をみたのではないかと思います。

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玄関の花は木蓮の新芽の枝と椿です。花入は奈良の辻村唯さんの作品です。自然釉の耳付きのもので、野の花がよく似合います。唯さんは2月4日から2月10日まで東京の日本橋三越本店で展覧会を開催されます。是非ご高覧下さいませ。

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今月の点心より~御食事・煮物椀~

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紅吉野椀

飴釉飯椀 卯山製陶 

今月の『季節の点心』より。最後は御食事と煮物椀のご紹介です。

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ご飯は煎り大豆のご飯です。大豆はフライパンでから煎りします。焦げ目がついてきたらバットに広げて荒熱を取ります。米を洗ってざるにあげ30分置きます。水に塩で味を付け、土鍋に洗った米と煎った大豆を入れて水加減して炊き上げます。飯碗は卯山製陶さんの飴釉のものです。

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煮物椀は“狸汁”。と申しましても本物の狸の肉が入っているわけではありません。地元信楽の多羅尾で作られている“多羅尾こんにゃく”を使った具たくさんの味噌汁です。こんにゃくの食感が狸の肉の食感と似ているということで、大きめのこんにゃくの入った味噌汁を狸汁と言うらしいのですが、はたしてどうなのでしょうか?お後は香のものが付きます。こちらの『季節の点心』のお献立は、2月の中頃までの予定です。皆様のご来店をお待ちいたしております。

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今月の点心より~強肴~

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粉引刷毛目角皿  福田英明(草土) 

今月の『季節の点心』より。“強肴(しいさかな)”とは、茶懐石で一汁三菜・箸洗い・八寸の献立以外に亭主の心入れで勧める一鉢のことをいいます。『季節の点心』では、旬の食材を使って魚仙が勧める一品を強肴としてお出しします。

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今回は牡蠣と地元甲賀の“忍葱(しのぶねぎ)”を使って油焼(ソテー)にしました。忍葱は太い白葱で、糖度がイチゴほどもある火を入れるととても甘い葱です。忍葱を笹に切って牡蠣と炒めます。もうひとつ添えるのは、これも地元・滋賀県産の永源寺もみじ舞茸です。

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器は草土の福田英明さんのもの。節分の時分ですので、使う器も桝をイメージする四角いものが多いかと思います。時にはこのように白ワインを添えて。美味しい料理にグラスもすすみます。

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今月の点心より~口取~

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安土忠久 グラス

今月の『季節の点心』より。節分の時期に合わせた口取です。朱の高台盆に盛りつけました。

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節分と言えば“鰯(いわし)”です。大羽いわしを三枚に卸して塩を当て軽く干します。干したほうが旨味がギュッと詰まります。それを遠火で炙ります。葉付の金柑はシロップで蜜煮にします。

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海老はぶぶあられを付けて揚げます。鬼の金棒に見立てます。ふぐは特製のスパイスを付けてから揚げにします。海老の金棒揚げとふぐのから揚げで“鬼は外・福(ふぐ)は内”です。

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手前に添えた白いものは、蓮根を酢漬けにしたものに氷餅をおろしたものをまぶした“雪輪れんこん”です。蓮根を厚めに剥いて芯の部分を使います。そうしますとちょうど雪の結晶のように見えます。柊の葉っぱをあしらって完成です。

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一合枡に落としたグラスには冷酒を注ぎました。グラスは飛騨高山の安土忠久さんの作品です。白洲正子さんも生前に愛用された安土さんのグラスは、温かみがあり手にすっと馴染みます。「安心して使えるグラスなのよ。」とは、白洲さんの安土さん評。普段はビールグラスとして使わせていただいてます。

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今月の点心より~向付~

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天目釉猪口 林田二咲子

黒釉丸皿 菱三陶園 白木一合枡

今月の『季節の点心』より。1月16日から点心の献立が変わりました。2月に向けて“節分”に準えた内容です。まずは向付からご紹介します。

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今回の向付は海鼠の酢漬けです。海鼠は塩で洗ってから番茶で湯がきます。ですから(茶振り海鼠)とも言います。出汁と酢・醤油・砂糖を合わせたものを鍋でひと煮立ちさせて追い鰹をします。冷ましたところに少量の鷹の爪と先ほどの海鼠を漬けます。

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節分に向けての献立ですので、盛り付けや器使いにも節分らしさを演出します。白木の一合枡に猪口に入れた海鼠を入れます。天目釉の猪口は私の祖父の二咲子(にしょうし)のもの。大根おろしと刻んだ柚子の皮を添えます。

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写真の酒器は青い片口が山村秀和さんの緑青釉の瓢形の作品です。お酒の切れもよく、青い釉薬が鮮やかな器です。ぐい吞みは篠原希さんの引き出しの高盃です。焼成中に窯の焚口から、鉄の棒で引っ掛けて引き出して急冷した作品。鮮やかなビードロがお酒を美味しくしてくれる、そんな酒徒垂涎のぐい吞みです。

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特別会席『冬籠り』其の伍

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鼠志野丸皿 奥田安正

一人前コンロ 

特別会席『冬籠り』より。油物と蒸し物・お食事のご紹介です。寒い時期ですので“薬喰い”にちなんで、油物には何か肉系のお料理をと思っていましたので、“もち豚”を使うことにしました。

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豚肉特有の嫌な臭みがなく、脂身もしつこさがなくて甘味があります。あまり脂がしつこすぎますと、コースの中でその料理だけが浮いてしまいバランスが悪くなります。コース料理や会席はいわば“物語”のようなもの。豚肉も和に合うよう仕立てます。合わす野菜は地元滋賀の伝統野菜の一つ・伊吹大根です。伊吹そばの薬味に使われる辛味大根の一種で、おろしにするときは皮ごとおろすのですが、まぁ辛いこと!辛いこと!それが火を通しますと、甘味と旨味があって実に美味しい!

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今回はもち豚と伊吹大根を油焼き(ソテー)にしまして、白味噌をベースにして白粒胡椒と生姜を加えた“胡椒味噌”を添えました。もち豚はそのままでも充分美味しくお召し上がりいただけます。器は奥田安正さんの鼠志野の皿です。重量感のあるガチッとした器が、ボリュームのある料理を受け止めてくれます。

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蒸し物は柚子釜を使った冬らしい一品です。ふぐの身と白子を柚子釜に入れて酒蒸しにしました。柚子は熱を加えますと香りが立ちます。柚子風呂などがそうですね。酒蒸しにしている蒸し器の蓋を開けますと、調理場にいい柚子の香りが広がります。

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そのままお出しさせていただいても面白味がありませんので、年末に倉庫を整理していた時に出てきた、陶板のような小鍋を使ってお出しすることにしました。蒸し上がった柚子釜を小鍋に置いて吸地を張ります。一人前コンロにセットして火をつけます。見た目にも温かく熱々のままお席までお届けできます。ポン酢を添えてお出しします。お鍋の出汁や柚子釜の出汁は、ポン酢の中に入れていただきますと美味しく召し上がっていただけます。

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お食事はかにご飯。留椀は赤出汁です。最後にその日のデザートがつきます。特別会席『冬籠り』は、お一人様5000円(税別)で1月31日までのご案内でございます。皆様のご来店心よりお待ちいたしております。

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特別会席『冬籠り』其の四

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粉引舟形皿 白道窯

赤呉須片口鉢

特別会席『冬籠り』より。焼物と煮物です。“特別会席”と銘打っていますので、いつもの魚仙のコースとは少し趣向を変えて。焼物は鱈の杉板焼きです。

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冬の魚の“三寒王“の一つ・鱈を味噌幽庵焼きにします。味噌幽庵焼は、酒・味醂・醤油を合わせた漬地に荒味噌を溶き混ぜたものに鱈の切り身を付け込みます。漬かった鱈を遠火で焼き上げます。

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焼きあがった鱈を薄い杉板で挟み竹の皮の紐で結んで遠火で炙って杉板に焦げ目を付けます。そうしますと杉の香りが鱈に移って風味が加わり、また一味違ったお味になります。焼いている間も焼き台の周りには、杉の焼けるいい香りが漂います。器は川口隆之さん率いる白道窯のものです。くすんだ粉引が料理を受け止め、杉の香りごとお客様のもとへ届けます。

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続いて煮物は冬を代表する京野菜の一つ・堀川牛蒡を使った一品です。太さのある堀川ごぼうは、芯が空洞になっています。糠湯がきなどで下処理した堀川ごぼう。芯を少しくり抜いて海老のすり身を詰めて蒸します。蒸しあがったものを味付けしたお出汁で炊いて味を含ませます。一緒に合わすのは海老の黄金煮。下処理した海老を卵黄の利いた揚げ衣を付けて揚げます。

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一旦揚げたものを熱湯をかけて油抜きしておきます。味付けしたお出汁でさっと炊きます。海老には揚げて火を通してますので、あまり長い時間炊きますと味も逃げますし衣も外れてしまうので注意します。器は赤呉須の方口で正月の月のお膳を華やかに彩ります。

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添えた酒器はダレン・ダモンテさんの手付きの注器と柴垣六蔵さんの白磁のぐい吞みです。赤と白でこれまた目出たいお膳になりました。

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特別会席『冬籠り』のご案内。次回は油物と蒸し物・お食事のご紹介です。

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特別会席『冬籠り』其の三

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伊賀徳利 信楽ぐい呑 古谷道生

特別会席『冬籠り』より。煮物椀です。今回のお椀は丸仕立。丸(まる)とは“すっぽん”のことで、すっぽんを炊く時のようにお酒を利かして吸地を仕立てますと丸仕立になります。

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椀種は“丸餅”。この(丸)もすっぽんです。すっぽんのえんがわや身を甘辛くしぐれ煮にしたものを餡にして餅粉で作った素地で包みます。餅粉を使用したのは、福井県出身の方に餅粉で作った安倍川餅を御馳走になったときに、「この食感は料理に使えるなあ・・・」と思いつきました。沸騰させてお湯に落として丸餅を湯がき椀盛りします。添えるのは地元甲賀の“忍葱”。太葱で糖分が苺ほどもある甘い葱です。笹に刻んで吸地でさっと炊きます。忍葱をのせて豆腐を添え吸地を張ります。最後に絞り生姜を落として出来上がり。さあ!熱々を召し上がれ!

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熱々の煮物椀には熱燗が合います。地元甲賀の水口にある蔵元『神開』を燗にしました。徳利とぐい吞は、亡くなられて何年も経ちますが今もなお人気の陶芸家・古谷道生さんの作品です。徳利は伊賀のもので、赤土混じりの生地のせいでしょうか、ビードロも焼きもとても渋く上がっています。何より道生さんらしいこの造形がいいですよね!ぐい吞みは火色の綺麗な信楽。徳利との色のコントラストが美しくお気に入りの一品です。道生さんの作品には一貫して精神的な美しさがあり、そのことが今もなお人の心を惹きつけて止まないのではないかと私は思うのです。(私もその一人なのですが)。

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特別会席『冬籠り』は都合により1月31日の土曜日までとなりました。ご予約お待ちいたしております。


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特別会席『冬籠り』其の二

004海鼠釉コロ鉢 卯山製陶

織部注器 鯉江良二  染付盃 村田森

特別会席『冬籠り』より。お造りです。旬の寒ぶりにまぐろの赤身と紋甲烏賊を添えました。

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寒ぶりは天然ものが入ったときには天然ものを使いますが、状態が良くない時は(ハーブぶり)や(すだちぶり)といった養殖のものを使います。日本の養殖の技術は世界一と言われています。餌にハーブやすだちを入れることで、昔の養殖のはまちなどに比べますと変な臭みも脂もなく美味しくいただけます。すし屋としては絶対の鮪。モチモチとした食感の紋甲烏賊もこの時期に美味しい魚です。器は卯山製陶さんの海鼠釉の鉢です。コロッとした形状が可愛らしく、ちょうど火鉢を小さくしたような器です。氷を敷いて盛りつけます。

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合わせた酒器は常滑の鯉江良二さんの織部と、京都の村田森さんの染付盃です。轆轤の名手・鯉江さんの注器は酒の切れもよく、形も楽しい器でお客様にもよく御所望されます。村田さんの染付は本歌の李朝の染付と変わらないくらいに(育って)きました。シミや貫入が入ってきても汚く見えず気にならないのは、作り手の李朝陶磁への造詣の深さとオマージュ故のことでしょうか。

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特別会席『冬籠り』は全10品でお一人様5000円(税別)でのご案内です。ご予約お待ちいたしております。

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特別会席『冬籠り』

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熨斗形皿

粉引(羊)盃 神崎継春

先週から特別会席『冬籠り』と題しまして新しいコース料理を始めました。全10品で、季節と旬を大切にひと手間をかけた会席料理です。御一人様5000円(税別)とお値打ち価格にさせていただいております。今回はその中から一品のご紹介です。

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一番最初にお出しさせていただく向付。平目の燻製数の子巻です。脇には菜花の辛子和えを添えました。青森から岩手・宮城にかけて獲れた天然の平目を軽く燻製にしたもので地漬けした数の子を巻きます。平目の燻香と数の子の触感が合わさって、口の中で楽しめます。菜花は地元滋賀県産。辛子を利かせた口直しです。器はお祝いの熨斗の形をした皿。どこの産地の物かはわかりませんが、昔から魚仙にある器で結納や披露宴のお席にもよく使う器です。

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合わせた粉引の盃は神崎継春さんの干支盃です。毎年お届けいただいておりまして、年始に「まずは一杯」の時も使わせていただくものです。神崎さんは美味しいものと美味しいお酒が大好きな方。この小さな盃にも口当たりや手取りなど、神崎さんのこだわりが感じられます。箸置きも“ひつじ”。前川幸生さんのものです。かわいい子羊でしょうか。

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次回も『冬籠り』からご紹介させていただきます。特別会席『冬籠り』はお電話にてご予約を承っております。期間は2月の初めまでの予定です。ご予約お待ちいたしております。

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